「アナと雪の女王」が世界中で大ヒットし、日本でも歴代映画興行収入で第3位に浮上した。これを受け、ウォルト・ディズニーのコンテンツ制作における競争優位が注目された。
それもそのはずである。ディズニーは、自身のコンテンツだけではなく、2006年にピクサー・アニメーション・スタジオ、2009年には「スパイダーマン」をはじめとするキャラクターの権利を持つマーベル・エンターテインメント、2012年には「スターウォーズ」を制作してきたルーカスフィルムなどを買収してきた。ディズニーのコンテンツ・ポートフォリオは、2005年にロバート・アイガーがCEOに就任して以降、より多彩になってきたといえる。
しかしディズニーの競争優位は、コンテンツ制作力やポートフォリオ構築力もさることながら、それ以上に、ケーブルテレビをはじめとする有料課金プラットフォームを活用した「コンテンツの収益化」に長けている点にある。
ディズニーが1作品で数十億から時には200億円にも及ぶ製作費を負担しながら、有力な映画制作スタジオを断続的に買収していけるのは、コンテンツの収益化基盤が強く、その結果形成された強固なバランスシートにある。ディズニーは、決してコンテンツ制作一本やりの企業ではなく、ディズニーランドを運営するだけのアミューズメント企業でもない。ディズニーは、資金調達を起点に「コンテンツの制作から収益化までのシステム」をデザインし、上手に運用している企業といえる。
そして、このシステムが生んだ最高の結果が「アナと雪の女王」なのである。
良いコンテンツを生み出すには、しっかりした収益基盤が欠かせない。そこを上手に運用するディズニーと比べると、日本のクールジャパン戦略は「良いコンテンツを地道に1つずつ海外に送り出す」という"竹槍作戦"のようにも映る。ディズニーの強さを知ることで、クールジャパン戦略の脆弱な部分を明らかにしていきたい。
コンテンツの収益化に長けたディズニー
まず、ディズニーの収益を事業セグメントごとに見てみよう。2013年9月期通期決算では、ディズニーファンに身近な「パーク&リゾート事業」が全社のオペレーティング・インカム(ここでは営業利益と呼ぶことにする)の21%を占める。映画製作を行う「スタジオ・エンターテインメント事業」は、実は6%に過ぎない。これらに比べ、ケーブルテレビ/放送局からのアフィリエイト・フィーや広告収入からなる「メディア・ネットワーク事業」の営業利益は圧倒的に大きく、全体の64%に達している。