希代の投資家ウォーレン・バフェットは、今、どんな未来予想図を思い浮かべているのだろう。長期株式投資で莫大な資産を築き上げた彼の視線の先には、どうやら壮大なシナリオが描かれているようだ。それはスマートシティーの規模をはるかに超える「スマートカントリー」として強い米国を実現することなのかもしれない。
投資家にとってのポートフォリオとは、投資家自身の渾身のアイデアや考えを組み合わせたものである。例えば、株式投資家であれば、一つひとつの株式について株価評価(バリュエーション)を行い、割安だと判断した銘柄をポートフォリオに組み入れる。いくつかのシナリオに基づいて将来の企業業績を予想し、現在株式市場で付いている価格と算出した企業価値を比較してどの程度の超過収益を手にすることができるかを想定する。
また、マクロの投資環境の変化により、資産価格がどう変動するかを想定し、業種や金融商品を絞り込んで投資先を決定することもある。
投資先を選択する際のアプローチとして、資産運用の世界では「ボトムアップ」や「トップダウン」と呼ばれる方法がある。前者は個別企業を徹底研究して銘柄を決める方法、後者は市場や経済の動向から有望銘柄を選定する方法だ。投資家は両アプローチのバランスをとりながらポートフォリオを管理していることが多い。
これはヘッジファンドが割高な金融商品を空売りする場合も同様だ。投資家が思った通りになるかどうかは別として、ポートフォリオとは、投資家が様々なシナリオに沿って考え抜いた未来像といえる。
バークシャーのポートフォリオはバフェットの未来予想図
さて、こうした投資プロセスを最も大規模に行い、成功してきた投資家がウォーレン・バフェットである。一般にバフェットは、6兆円以上の資産を持ち、世界長者番付でも首位になったことがある人としてよく知られている。しかし、プロフェッショナルの投資家の中でバフェットが最も評価される点は、バフェットが60年近くも驚異的な運用パフォーマンスを続けてきたことだ(※)。
(※)投資信託のスターファンドマネージャーと呼ばれる人たちでも、優れたパフォーマンスを上げることができるのはせいぜい10年程度。それと比べてバフェットの60年というのは異常値である。加えて、バフェットの経営する保険会社バークシャー・ハサウェイのアニュアルレポート(2013年)によれば、同社の一株当たりの純資産は、1965年から2013年までに、6900倍以上になったとしている。これは複利年率で20%近いことになる。同期間におけるS&P500のパフォーマンスの複利年率が10%程度であることを考えれば、いかにバフェットの運用パフォーマンスが株式市場平均を上回っていたかが分かる。
ポートフォリオが投資家の未来予想図の一部を表しているとするのであれば、バフェットの経営する保険会社バークシャー・ハサウェイ(以下、バークシャー)のポートフォリオを分析することで、彼が未来をどのように見ているのかを垣間見ることができる。
そこには、「米国という国家がどのように競争優位を確立しようとしているのか」が見え隠れしている。そして、日本の将来の産業構造を考えるヒントがある。