世界株高、米大型減税――。2018年の幕開けは明るいが環境変化のスピードは加速している。「晴れている日こそ屋根の修理を」。必ずや訪れる試練にどう備えるべきか。ボストン コンサルティング グループ(BCG)のエースコンサルタントが着目する各テーマの戦略を紹介する。第1回目はブームから実用段階へ入った人工知能(AI)。パートナーの高部陽平氏が論じる。
分類、識別、予測...信用査定や生産管理で威力
現在、普及しているAIのベースとなっているニューラル・ネットワークという技術は、実は20年以上前から存在した。当時との大きな違いの一つは、マシンの処理能力が向上し、以前は大型マシンで何週間もかかった計算が、手元のPCを使って短時間でできるようになったこと、加えて、AIを鍛えるためのデータセットが世の中に溢れるようになってきたことだ。
これらに後押しされ、ニューロンの組み合わせやレイヤーを指定しなくても、より良い成果を得られる組み合わせやレイヤーを探し出し、動的に変更しながら精度を高めていく、ディープラーニングなどの技術が実用可能になってきた。脳細胞が自ら発達していくように、自己強化する仕組みが現実的になったのだ。
その一方で、今普及しているAIは基本的に単機能だ。得意とするのは、主に「分類」「識別」「予測」の3つであり、活用できる場面は自ずと限られてくる(図表3)。分類が用いられる場面は、金融業界における査定や不正の検知などだ。